4.企業情報と指標を読む
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企業の情報は一次資料から確認する
株価や指標を見る前に、その企業がどのような事業で収益を得ているかを確認する必要があります。
企業情報を確認する代表的な資料には、次のものがあります。
決算短信
上場企業が決算内容を速やかに知らせるために公表する資料です。売上高、利益、財政状態、業績予想、配当予想などを確認できます。有価証券報告書
事業内容、リスク、財務諸表、株式の状況、役員、コーポレートガバナンスなどを詳しく記載した法定開示書類です。適時開示資料
業績予想の修正、配当方針、増資、合併など、投資判断に重要な情報を速やかに公表するものです。株主総会資料
事業報告や議案など、株主総会に関する情報を確認できます。企業のIR資料
経営戦略や事業計画などを投資家向けに説明する資料です。
有価証券報告書などの法定開示書類は、金融庁のEDINETで確認できます。
SNSやニュースは情報を知る入口になりますが、内容が省略されている場合があります。重要な判断に関係する情報は、企業の開示資料などの一次資料までさかのぼって確認します。
財務諸表から企業活動を把握する
企業の財務状態や経営成績を確認する基本資料が財務諸表です。特に重要なものは、次の三つです。
貸借対照表は、ある時点における企業の財産と資金調達の状態を表します。
資産:現金、売掛金、設備など
負債:借入金、買掛金など
純資産:株主が出資した資金や企業が蓄積した利益など
基本的な関係は、次のとおりです。
資産=負債+純資産
損益計算書は、一定期間の収益と費用から、どの程度の利益が生じたかを表します。
売上高
営業利益
経常利益
税引前利益
当期純利益
利益が増えていても、本業によるものか、一時的な資産売却などによるものかで意味は異なります。
キャッシュ・フロー計算書は、一定期間の現金の増減を表します。
営業活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フロー
利益が計上されていても、売上代金をまだ回収していなければ、現金が増えていないことがあります。そのため、利益と現金の動きを分けて確認します。
PERとPBRから株価との関係を見る
PERは「株価収益率」と呼ばれ、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを表します。
PER=株価÷1株当たり利益(EPS)
例えば、株価が2,000円、EPSが200円の場合、PERは次のようになります。
2,000円÷200円=10倍
一般に、PERが高い企業は将来の成長が期待されている場合があります。一方、利益に対して株価が高く評価されすぎている可能性もあります。
PERが低い企業は割安に見えることがありますが、業績悪化や成長性への不安が株価に反映されている場合もあります。赤字企業ではEPSがマイナスになるため、PERによる比較が適さないことがあります。
PBRは「株価純資産倍率」と呼ばれ、株価が1株当たり純資産の何倍で評価されているかを表します。
PBR=株価÷1株当たり純資産(BPS)
株価が2,000円、BPSが1,000円の場合、PBRは次のようになります。
2,000円÷1,000円=2倍
PBRが1倍を下回っていても、その企業が直ちに割安とは限りません。保有資産の実質的な価値、将来の収益力、事業継続への不安なども確認する必要があります。
ROEから自己資本の収益性を見る
ROEは「自己資本利益率」と呼ばれ、株主が拠出した資本などを使って、企業がどの程度の利益を上げたかを表す指標です。
単純化した計算式は、次のとおりです。
ROE=当期純利益÷自己資本×100
例えば、当期純利益が20億円、自己資本が100億円の場合、ROEは次のようになります。
20億円÷100億円×100=20%
ROEが高い企業は、自己資本を効率よく利益へ結び付けていると考えられる場合があります。ただし、借入れを増やして自己資本を相対的に小さくすると、ROEが高くなることもあります。
ROEを見るときは、次の情報も合わせて確認します。
利益が本業から継続的に生じているか
借入金が過度に増えていないか
一時的な利益の影響を受けていないか
過去数年間でどのように推移しているか
同業他社と比べてどの程度か
PER、PBR、ROEの計算方法や表示データの見方は、日本取引所グループ「株価検索―はじめての方へ」でも確認できます。
配当利回りと配当性向を区別する
配当利回りは、株価に対して年間配当金がどの程度あるかを表す指標です。
配当利回り=1株当たり年間配当金÷株価×100
株価が2,000円、1株当たり年間配当金が60円の場合、配当利回りは次のようになります。
60円÷2,000円×100=3%
配当利回りが上昇する理由には、配当金の増加だけでなく、株価の下落もあります。そのため、配当利回りが高いという理由だけで、企業の状態が良いとは判断できません。
配当性向は、企業が利益のうちどの程度を配当へ回したかを表す指標です。
配当性向=1株当たり配当金÷1株当たり利益(EPS)×100
EPSが200円、1株当たり配当金が60円の場合、配当性向は次のようになります。
60円÷200円×100=30%
配当性向が高い場合、株主への還元を重視していると考えられることがあります。一方、利益に対して配当負担が大きく、将来の事業投資や配当継続の余力が限られている可能性もあります。
配当の持続性を考えるときは、配当利回りだけでなく、利益、営業キャッシュ・フロー、財務状態、配当方針などを合わせて確認します。
指標は同じ条件で比較する
株価指標は、一つの数字だけで投資対象の良し悪しを決めるものではありません。比較するときは、次の点に注意します。
同じ業種の企業と比較する
現在の数値だけでなく過去の推移も見る
実績値か予想値かを確認する
連結決算か単体決算かを確認する
一時的な利益や損失の影響を確認する
株式分割や会計方針の変更を確認する
数値の基準日をそろえる
例えば、金融業と製造業では、資産や負債の構造が大きく異なります。異なる業種のPERやPBRを単純に比べても、適切な結論を得られるとは限りません。
また、企業の業績予想は将来の見込みであり、その実現が保証されているわけではありません。複数の資料と指標を組み合わせ、「なぜこの数字になっているのか」を考えることが大切です。
税金と取引費用を差し引いて考える
株式の売却益は、売却価格から取得費や売却時の手数料などを差し引いて計算します。
譲渡益=売却代金-取得費-売却時の手数料など
2026年7月現在、個人の株式等の譲渡益には、原則として所得税等15.315%と住民税5%を合わせた20.315%が課税されます。
上場株式等と一般株式等では損益の区分が異なります。上場株式等の譲渡損失については、一定の要件を満たすと、上場株式等の配当等との損益通算や、翌年以後3年間の繰越控除が認められる場合があります。
口座の種類や確定申告の有無によって取扱いが異なるため、個別の税務判断では最新情報を確認する必要があります。詳しくは、国税庁「株式等を譲渡したときの課税」を参照してください。