リスクは収益率のぶれとして捉える

日常生活では、リスクという言葉を「危険」や「損失の可能性」という意味で使います。ポートフォリオ理論では、リターンが予想からどの程度ぶれるかという意味で使うのが一般的です。

収益率が大きく上昇する可能性と、大きく下落する可能性の両方を含めて、値動きのぶれをリスクと捉えます。

ただし、金融商品を実際に利用するときは、値動き以外のリスクも確認しなければなりません。

  • 発行体が支払い不能になる信用リスク

  • 必要なときに売却しにくい流動性リスク

  • 外貨と円の交換比率が変動する為替変動リスク

  • 物価上昇によって実質的な購買力が低下するインフレリスク

  • 金利変動によって債券価格などが変動する金利変動リスク

統計上のリスクが小さく見えても、必要な時期に換金できない商品や、特定の発行体に集中している商品が、家計にとって適切とは限りません。

相関係数は一緒に動く傾向を表す

相関とは、二つの資産がどの程度同じ方向または反対方向へ動く傾向があるかを表す考え方です。その強さを示す指標が相関係数で、プラス1からマイナス1までの範囲で表されます。

  • プラス1に近い場合:同じ方向へ動く傾向が強い

  • 0に近い場合:直線的な連動性が弱い

  • マイナス1に近い場合:反対方向へ動く傾向が強い

相関係数が0であっても、二つの資産にまったく関係がないと断定できるわけではありません。あくまで、直線的な連動性が確認されにくいことを表します。

同じ方向へ動きやすい資産だけを組み合わせると、一斉に上昇することもありますが、一斉に下落する可能性もあります。異なる値動きをする資産を組み合わせることで、一方の下落を他方の値動きが部分的に補い、ポートフォリオ全体のぶれを抑えられる場合があります。

相関係数と分散投資の関係は、年金積立金管理運用独立行政法人「分散投資の意義③」でも確認できます。

ポートフォリオのリスクは単純平均にならない

ポートフォリオの期待収益率は、各資産の期待収益率を構成割合で加重平均します。一方、ポートフォリオのリスクは、各資産のリスクを単純に加重平均するだけでは求められません。資産同士の相関も影響するためです。

二つの資産で構成するポートフォリオのリスクは、次の式で表されます。

ポートフォリオの標準偏差
=√{wA²σA²+wB²σB²+2wAwBσAσBρAB}

この式で使う記号の意味は次のとおりです。

  • wA、wB:各資産の構成割合

  • σA、σB:各資産の標準偏差

  • ρAB:二つの資産の相関係数

相関係数がプラス1より小さければ、組み合わせ方によってポートフォリオのリスクが、各資産のリスクを単純に平均した水準より小さくなる可能性があります。これを分散投資効果といいます。

ただし、相関係数は一定ではありません。平常時には異なる動きをしていた資産が、金融市場の混乱時には同時に下落することもあります。過去の相関係数を、将来も変わらない数字として扱わないことが重要です。

分散は数ではなく共通要因から考える

保有商品の数が多くても、同じ要因で動く商品ばかりであれば、十分に分散されているとは限りません。

分散は、次の方向から確認します。

  • 資産の分散:預金、債券、株式、不動産関連資産などに分ける

  • 地域の分散:国内だけでなく、複数の国や地域へ分ける

  • 通貨の分散:円と外貨の割合を確認する

  • 発行体や業種の分散:特定の企業、業種、国へ集中していないか確認する

  • 時間の分散:購入する時期を分ける

一定額を定期的に購入する方法では、価格が低いときに多く、価格が高いときに少なく購入することになります。これをドル・コスト平均法といいます。購入時期を一度に集中させない方法ですが、利益を保証するものではなく、価格が長期間下落すれば損失が生じます。また、価格が上昇し続ける局面では、一括して購入した場合より収益が小さくなることもあります。

分散投資は、一部の企業や資産に固有のリスクを抑える効果が期待できます。一方、市場全体の下落や景気後退など、分散しても避けにくいリスクは残ります。